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社会・文化

破綻寸前の「首都圏医療」

私大医学部で「経営危機」が続々

2015年9月号

 首都圏の医療拠点と位置づけられる私立医科大学や私立大医学部の附属病院が経営の危機に瀕している。もともと人件費が地方よりも高い構造的な問題に加え、昨年四月に五%から八%に引き上げられた消費増税が火に油を注いだ。医療機関は薬や医療機器を購入する際に消費税を負担する一方、診療報酬は非課税で患者や保険組合に請求できない。それゆえ、消費税分は持ち出しとなってしまうからだ。ところが厚生労働省や日本医師会は問題を把握しながらも、見て見ぬふり。ただでさえ救急患者や妊婦のたらい回しが問題視されているにもかかわらず、この現状を放置したままでは首都圏の医療体制そのものが崩壊しかねないのだ。 四十代外科医で月収四十万円以下  存亡の瀬戸際に立たされている筆頭は、東京・文京区の日本医科大学(日医)。脳卒中や交通事故など救急患者を治療する医療機関の中核だ。日本最古の私立医大で、間もなく開学百四十年を迎える。  日医が公表した財務資料を読むと、その惨状は目を覆わんばかりだ。平成二十五年度は二十九億円、二十六年度は百五十八億円の赤字。総資本を自己資本で割った財務レバレッジは三・・・