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経済

《クローズ・アップ》瓜生道明(九州電力社長)

原発再稼働「一番手」の吉凶

2015年9月号

 日本の原子力発電所が全機停止して以来、約二年ぶりの再稼働トップバッターが九州電力川内原発1号機(鹿児島県)となった。九電は電力供給の余力を示す予備率が三・一%と安定供給の最低ラインといわれる三%ぎりぎりだったが、これで五%を超えた。停電や供給制限などのリスクは低下し、電力会社として「水面の上に顔を出して呼吸できた」(九電関係者)形。地元や経済産業省、原子力規制委員会との調整など、再稼働にあたり瓜生道明社長の力は大きかったといわれる。

 もともと九電は日本の電力会社で原発稼働率が関西電力、四国電力などとトップを争う「原発の優等生」。川内、玄海(佐賀県)の二カ所の原発を持ち、福島第一原発事故前の一〇年度の総発電量に占める原発比率は四六%。原発のおかげで電気料金は北陸電力に次いで全国で二番目に安かった。

「シリコンアイランド」と呼ばれるほど九州全域には半導体、電子部品産業が立地し、北部九州にトヨタ自動車、日産、ダイハツが生産拠点を構えた理由も電気料金の安さ、原発による安定供給というふたつが大きな要素になった。原発の停止は原発依存度の高かった九電に・・・