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さまよえる安倍「ロシア外交」

なぜ大悪党プーチンを日本に招くのか

2015年10月号特別リポート

 英国の名宰相ウィンストン・チャーチルは、一九三九年十月一日のラジオ演説でロシア(旧ソ連)の行動を「謎に秘められた不可解性に包まれたミステリーだ」と形容した。第二次大戦以降の世界は繰り返しこの『謎』に振り回されてきた。チャーチルは同じ発言で、「しかし鍵はあるはずだ。その鍵とはロシアの国益だ」と述べたが、果たしてそのとおりだろうか。

 理解できないのは九月に入ってからロシアがシリアへの軍事的テコ入れを最初は否定しつつ、現実に開始した事実である。軍事行動のすべてを知っているはずのプーチン大統領は九月四日に訪問先のウラジオストクで記者団が「ロシアが兵員数千人と航空戦力のシリアへの投入を決めたとのイスラエル情報は本当か」と質問したのに対し、イスラム国(IS)に対する作戦参加は「時期尚早だ」と述べ、「シリアの友人や(中東)地域諸国と協議を続ける」と語った。

 問題の核心は、ロシアが欧米で悪の権化といわれているシリアのアサド大統領を軍事支援しようとしているのか、あるいはかねてから提唱してきたアサド政権を含む対国際テロ共同戦線の創設を進めようとしているのか・・・