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経済

止まらぬ「敵対的TOB」の連鎖

今年も続発「仁義なき戦い」の見所

2021年2月号

「とうとう日本製鉄までもか……」。一月下旬、メガバンク幹部は絶句した。この幹部を驚かせたのは、日本製鉄が東京製綱に仕掛けたTOB(株式公開買い付け)だ。現在九・九%の出資比率をTOBで一九・九%に高めるというものだが、東京製綱に対して無断で仕掛けたのだ。現経営陣に任せたままでは低迷する業績から脱却できないとして、日本製鉄は持ち株比率を引き上げて発言力を増大させるのが狙いだ。
 東京製綱は「当社に対して何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたもの」と猛反発した。つまり日本製鉄は東京製綱の合意なく、敵対的になることを覚悟でTOBを仕掛けたのだ。日本製鉄といえば、経団連の会長を何人も輩出している、いわばオールドエコノミーの代表格。そんな重鎮ですら敵対的TOBを仕掛ける時代になった。
 かつての日本企業にとって、「ご法度」だった敵対的TOB。二〇一九年、岡藤正広会長CEOが率いる伊藤忠商事がデサントに仕掛けた力ずくの買い増しを号砲に、今では日本にも「敵対的」はすっかり定着してきた感がある。 
 そして二一年、その流れはもはや大波となろう・・・