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経済

《企業研究》 東京証券取引所

投資家を裏切る「不公平」株式市場

2015年10月号

 案の定というべきか。粉飾決算事件を引き起こした東芝に対する東京証券取引所の処分は、特設注意市場銘柄への指定という「ほぼ型通りの中身」(金融関係者)で終わった。

「大変残念なことに最近、当取引所の上場会社の中で短期的な視点で見掛け上の利益を上げるために不正な会計処理を行い、投資者の信頼を傷つける事案が発生した。(今年六月から適用が開始された)コーポレートガバナンス・コードを通じて我が国企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す中で生じた不祥事であり、市場開設者として重く受け止めるとともに深く憂慮している」

 処分を下した九月十四日、東証を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)の清田瞭CEO(最高経営責任者)はこうコメントし、特注銘柄指定を「上場廃止に準ずる措置だ」としてその〝厳罰〟ぶりをしきりと強調してみせたが、市場参加者の間には何やらしらけムードも漂う。指定を受けたからといって東芝株の売買ができなくなるわけでも、取引が制限されたりするわけでもないからだ。当の東芝グループ関係者の一人も「差し当たり実害はない」と、受け流す。
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