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経済

《クローズ・アップ》 神津 里季生(次期連合会長)

悪しき労組体質の「象徴」

2015年10月号

 日本労働組合総連合会(連合)の次期会長に新日本製鐵(現新日鐵住金)労組出身の神津里季生氏(五十九歳)が決まった。連合が最大の支持母体となっている民主党が弱体化し、自民党一強時代が続くなかで、影響力の低下、形骸化の進む労働運動とその中心にある連合の組織をどう再構築していくのか、きわめて難しい仕事を任されることになる。

 三期六年の古賀伸明会長時代の連合は天国と地獄の両方を経験した。二〇〇九年九月の民主党政権の誕生と一二年末の総選挙大敗、下野、そして安倍晋三政権による労組への攻勢だ。こうした潮流に対する古賀会長の対応は保守化と政治への擦り寄りに集約されるだろう。民主党政権ではパトロンとして労働者保護よりも床の間を背にした権力の座を楽しんだ挙げ句、政権交代後には自民党への接近を試み、安倍政権にいいようにあしらわれた。

 それを象徴するのが半世紀以上にわたって政府与党と労働運動の直接対話の場となっていた「政労会見」の廃止である。代わりに設けられた「政労使会議」は労働側が政府にもの申す場ではなく、「政府から労組への政策説明の場」に堕している。
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