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政治

《土着権力の研究》山形県 新田嘉一(平田牧場会長)

庄内地方で突出する「新興政商」

2015年10月号

 山形県北西部の庄内平野。言わずと知れた日本有数の米どころであり、県内陸部の二大都市、山形市、天童市に対抗する、酒田市と鶴岡市を抱え込む。庄内平野のコメ農家を中心とした「農業票」は山形県内で強い影響力を持ち、かつての自民党農水族のドン、加藤紘一を輩出した。しかし、自民党と農協の関係は近年綻びが生じ、選挙では足並みが揃わない。

 その間隙をつくように、最近山形県で政界に強い存在感を示しているのが、やはり庄内・酒田市出身の財界人、新田嘉一だ。酒田市内の旧平田町で十六代続く地主一族「新田家」の現当主である。

知事も「献金をお願い」

 かつて、新田家はご多分に漏れず稲作を家業としてきた。しかし、昭和八年(一九三三年)生まれの新田は庄内農業高校を卒業後、五三年に仲間の若者とともに養豚業を始めた。わずか二頭から始まった養豚業は試行錯誤を重ねながら徐々に拡大していく。新田は、六四年には食肉直売所を開設し、流通に乗り出した。その三年後に株式会社「平田牧場」を興し、これが現在まで続いている新田家の家業となった。七四年に開発に・・・