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政治

《罪深きはこの官僚》金尾健司(国土交通省水管理・国土保全局長)

豪雨洪水被害を 拡大させた戦犯

2015年10月号

 東日本の広い範囲を襲った台風による水害の爪痕は今も生々しい。

 直接的な原因は「五十年に一度」といわれる豪雨による河川の流量増加だが、直後には自治体による避難誘導の不手際が事態を悪化させていたことが明るみに出た。しかし、国内河川の治水方針を決めてきた責任は一義的に国、つまり国土交通省にある。これまで、荒唐無稽ともいうべき「ダム万能思想」に依存する治水事業を続けてきた国交省の政策の矛盾が今回の災害で露呈した。

 鬼怒川上流にある四つのダムを管理する国交省は九月九日、下流の氾濫を防ごうと、放流量の調節を開始したが豪雨の前には無力だった。国交省が治水を目的として計画中のダムは全国に多くある。しかし、鬼怒川流域では新たな建設計画はない。つまり、国交省が必要十分と考えたダムでは対応できないことが証明された。ダムで河川氾濫を防ぐという、発想そのものが完全否定されたのである。今回の被害は「ダム官僚」がもたらした人災なのだ。

 その責任はダム行政を所管する水管理・国土保全局(旧河川局)にある。現在の局長は今年七月に九州地方整備局長から・・・