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連載

Book Reviewing Globe 377

ロシアの「死活的防衛線」はどこか

2015年10月号

 もし神がウクライナに山脈をつくっていたならば、ウクライナの歴史はいまとはまったく違っていただろう。

 しかし、ウクライナは、東ヨーロッパ平原という巨大な平地(flatland)に丸ごとすっぽり入ってしまう大平原国家であり、大穀倉地帯である。それ故に、フランスであれドイツであれ欧州の列強にとっては、ここはロシア攻撃のまたとない橋頭堡となってきた。

 従って、ロシアは、ウクライナを少なくとも緩衝地帯にしておく必要がある。同国をEU(欧州連合)とNATO(北大西洋条約機構)に加盟させず、不凍港であるクリミアのセバストポリ港をロシアに租借させ続けなければならない。

 地政学は地理、歴史、民族、宗教、エネルギー資源、人口といった要素が国際関係にどのような影響を及ぼすかを探求する学問だが、言語も大きな要素である。

 ウクライナの親欧暫定政権は、クリミアをはじめウクライナのいくつかの地域で採用してきたロシア語第二公用語政策を廃止すると一方的に宣言した。それはプーチンにウクライナのロシア人を保護しなければならない・・・