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経済

北陸新幹線「延伸」で苦境のJR西日本

政治が強要する「不採算路線」の重荷

2015年11月号

 西日本旅客鉄道(JR西日本)が北陸新幹線の延伸で、「政治主導」という名の無理難題を押し付けられて苦悶している。政府、与党から福井県敦賀までの先行開業を迫られたばかりか、そこから大阪へ至るルートで八方ふさがりに陥っているからだ。福井県選出の稲田朋美・自民党政調会長が地元を最も長く通る「小浜ルート」に固執し、JR西も表向きはこれに傾いている。ところが最も経費がかかる一方で採算は見込めない。このまま政治のごり押しで北陸新幹線を延伸させれば、JR西は下り坂を転げ落ちていく。  福井駅は異様だ。巨大な恐竜壁画を施した駅舎の前に、実物大の恐竜模型が並ぶ。ホームには恐竜の人形が座るベンチ。恐竜の化石が多数見つかった地に因んだ演出だが、地元住民は「ここは自殺名所の東尋坊か恐竜博物館ぐらいしか、見所がない」と自嘲する。福井県の交通の便は悪い。眼鏡製造以外に目立った産業はなく、観光資源も乏しい。玄関口は福井駅以外に福井空港があるものの、定期便がなく廃港同然。その福井の希望の光こそ北陸新幹線の延伸だ。  JR西の業績は上向いている。北陸新幹線の長野〜金沢間開業前の二〇一五年三月期・・・