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田口家(西濃運輸)

大垣から県政操る「運送業一族」

2015年11月号

 岐阜の政治は大垣から動く―。県庁所在地である岐阜市に対抗する大垣市の存在が、岐阜県の勢力図に大きな影響を与えると地元では言われている。  大垣に拠点を置き、県政界に大きな影響力を及ぼしているのが西濃運輸を中核とするセイノーホールディングス(HD)の創業家である田口家だ。現在の当主は、同HD代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)を務める田口義嘉壽であり、三代目にあたる。  ヤマト運輸、佐川急便という業界大手には大きく後れを取るものの、関連会社を含めた年間連結売上高五千億円を誇るセイノーは、大垣を代表する企業だ。そのルーツは、一九三〇年(昭和五年)に現在の岐阜県下呂市で田口利八が立ち上げた「田口自動車」である。利八は当時進められていた大がかりな公共工事の運搬事業で業績を伸ばしたが、さらなる拡大を目指して創業からわずか三年後に大垣市に進出した。当時盛んだった紡績産業関連の運輸事業を標的にしたという。大垣を選んだのは、利八が「将来できる高速道路網の結節地点になる」と睨んだからだと言われる。  戦争中は政府の方針により、企業統合が進められたが運輸業も例外ではなく、大垣を中心・・・