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WORLD

「オバマ最終年」の無秩序世界

「テロと中国」米国は日本を守らない

2016年1月号特別リポート

 日本を中心とした北東アジアの地図を基に国際情勢を判断したら、大きな流れは理解しがたいのではないか。一昨年から昨年末にかけて世界全体を震撼させたのは南シナ海における中国の人工島造成でもないし、軍事力を背景にしたクリミア半島のロシアによる強制編入でもなかった。シリアとイラクに跨がるように出現したイスラム国(IS)という名の国家ではない武装集団が、あるいはアルカーイダがらみの国際テロ組織が世界各地にテロを引き起こし、その連鎖反応で国家と国家の間に一種の合従連衡が始まった。

 任期をあと一年残すオバマ大統領が露呈させたのはテロ情報の不足と米軍の血は一滴たりとも流さない抑制的原則、「オバマ・ドクトリン」だ。昨年十二月中旬に行われた共和党の第五回テレビ討論会での主題は「テロ不安」で、イスラム教徒入国禁止を叫ぶ不動産王ドナルド・トランプ氏(六十九歳)が圧倒的な存在感を示した。フランスでは移民排斥、難民受け入れの即刻中止を叫ぶ極右政党の国民戦線(FN)が十二月初旬に行われた地域圏議会選の第二回投票で敗れはしたが、第一回では「歴史的」勝利を収め、マリーヌ・ルペン党首は来年の大統領・・・