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WORLD

新興国経済は「二番底」の深みへ

世界の景気回復を阻む障害続々

2016年1月号

 新興国経済が昨年に続き停滞し、今年は「二番底」に陥る様相を強めている。原油価格を筆頭に鉱物資源や食糧など一次産品価格の下落に加え、アメリカのゼロ金利政策終焉という新事態を迎えたからだ。膨らむ一方の新興国債務が、世界経済回復の障害になるのは必至で、特にリオデジャネイロ五輪ホスト国のブラジルなど、中南米の危険は増している。今年の世界経済は、新興国の債務拡大と中国経済の減速継続という、二つの時限爆弾に脅かされ続ける情勢だ。 「私たちは、海図なき海に入ったということだ」  今の世界経済に最も精通した男、モハメド・エラリアンにこうにべもなく言われては、そうだと覚悟するほかはない。エラリアンは、国際通貨基金(IMF)のエコノミストからスタートし、各紙・誌の「世界の頭脳」(またはそれに類するリスト)の常連経済学者になった。さらに、世界的な資産運用会社「ピムコ(PIMCO)」の最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者(CIO)として、マネー運用でも世界のトップを走ってきた。  理論と実務の双方で卓越した人物が、十二月の米国連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国がゼロ金利解除に踏み切・・・