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経済

もはや限界「クロダノミクス」

ウィリアム・ペセック(在日経済ジャーナリスト)

2015年12月号

―日本経済の現状をどう見ていますか。

ペセック 車で言えば、ローギアの状態でやっと加速してきたくらいだ。安倍首相は「三本の矢」と言うが、目下、「金融緩和」という一本の矢しか見ていない。私は、今の日本は「アベノミクス」ではなく、黒田日銀総裁だけがやっている「クロダノミクス」だと言っている。ただし、クロダノミクスで、日本は糖分過剰の「シュガーハイ」状態だった。筋肉増強剤ステロイド漬けとも言える。今はそれが切れたということ。日銀が追加緩和に踏み切らないのは、これ以上打つ手がないことをわかっているからだろう。刺激剤はやがて効き目が減る。カフェイン抜きのコーヒーを飲むようなものだ。


―なぜいまだにデフレを退治できないのでしょうか。

ペセック デフレ退治に焦点を当てること自体が間違いだからだ。デフレは日本経済の病の症状であり、根本的原因ではない。日本の問題は、競争力喪失、人口減・高齢化、・・・