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経済

「軽自動車」の薄暗い闇

疑われる安全性能と米国の「退場勧告」

2016年6月号

 軽自動車、それは世界で日本にしか存在しない特殊な乗り物だ。「国民の足」として、もはや地方を中心に生活必需品と言ってもいいほど普及している。六六〇ccのエンジンで四人を乗せることができる。しかも、さまざまな装備を搭載しながら、燃費性能は群を抜いて高い―。国民のニーズと期待値が高いがゆえに、メーカー同士の熾烈な競争が不正の歪みを生じさせたのか。三菱自動車の燃費偽装問題が冷めやらぬ中、スズキによる燃費の不正測定が発覚した。最も便利で小回りのきく車がその親近感とは裏腹に抱える闇は、果てしなく深いのだ。
ガラパゴス業界の宿痾
 公共交通機関の不便な地方に行くほど軽自動車の普及率は高い。東京ではさほど目立たない軽自動車の黄色のナンバープレートは、地方へ行くほど目につく。一家に一台ではない。生活の足として必要な自動車が家族一人に一台となれば、経費の安い軽自動車が選ばれるのは至極当然のことである。
 軽自動車の大きな魅力は車両価格の安さと割安な経費にある。排気量が六六〇ccを超える普通車に比べ、取得や保有の段階で優遇税制が適用される。軽・・・

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