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経済

《経営者東京裁判》まやかし「プロ経営者」の退場

原田 泳幸  ベネッセHD会長兼社長

2016年6月号

 「原田を選んだのは、このまま放置しておけば取り返しのつかないことになると思ったからだ。会社の体力があるうちに、グループ全体を立て直したい。それができるぎりぎりのタイミングだった」
 ベネッセホールディングス(HD)の次期会長兼社長に原田泳幸を指名した二〇一四年春、創業家出身で当時会長(現最高顧問)だった福武總一郎はこう語っていた。その原田が会社をさらに一歩、取り返しのつかない状態に追い込んだままこの六月、ベネッセを去る。
「不運」(市場関係者)もあった。会長兼社長に就任した直後に発覚した、国内最大級ともいわれる個人情報漏洩事件だ。グループ企業に派遣で勤務していたエンジニアが、ベネッセの主力商品「進研ゼミ」の顧客の氏名、電話番号、生年月日や性別などの情報を盗み出し、名簿業者に売り捌いていたもので、最終的に流出したデータは約三千五百四万件にものぼった。信用は地に落ちた。
 もっとも原田自身は事件が発覚した当初、これを不運とは思わず、内心むしろ「好機」と受け止めていたフシが窺えなくもない。危機を煽り立てることでうるさ型の古参役員や幹部らの口を封じ込め・・・