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政治

安倍外交と「武器輸出」の深刻な蹉跌

豪「潜水艦受注」完敗の本質

2016年6月号

 安倍晋三首相が鳴り物入りで推し進めた豪州への通常動力型潜水艦の売り込み劇はフランス企業の受注であっけなく幕を閉じた。この黒星は、単に日本のひとつの防衛装備の輸出が失敗したという一過性の話にとどまらない。なぜなら、安倍首相は就任以来、対中国牽制、そして陰の成長戦略の柱として豪州への潜水艦の売却を最優先課題に位置づけてきたからだ。いわば、安倍外交の真価を問う重大な試金石で大きくつまずいたのだ。敗北の本質は、何かと「戦略」を持ち出す外交とは程遠い首相の思い入れと、それに唯々諾々と従った関係省庁、企業の無定見に尽きる。あれだけアピールした「日本の潜水艦の性能と技術は世界最高水準」という金看板も揺るがせてしまった。今回の挫折で日本が負う報いは底なしに深い。
単線思考の危うさ露呈
「日豪は歴史の試練に耐えたその信頼関係をいよいよ安全保障における協力に活かしていく(中略)。新たな『特別な関係』へ歴史的脱皮を遂げた」。安倍首相が豪語したのは二〇一四年七月、舞台は豪州の国会議事堂だった。直後、安倍首相は当時のアボット首相と防衛装備品・技術移転協定に・・・