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連載

BOOK REVIEWING GLOBE 385

「両大戦間」の歴史の教訓

2016年6月号

 第一次世界大戦と第二次世界大戦の間のいわゆる両大戦間期に対する関心が最近、強まっている。
 リーマンショック後の世界経済危機と欧州の右旋回、さらには米国のトランプ現象に表れる先進工業国の内政危機が、両大戦間の危機の時代と似通ってきているとの不安感がそこにはある。
 第一次世界大戦は一九一六年夏から冬にかけてのソンムの戦いに特徴づけられる。兵士たちは塹壕の中ではい回るだけのミミズのような存在となった。
 この戦いでは、双方合わせて百万人が戦死した。英国軍は戦闘の最初の日だけで六万人の死傷者を出した。兵士たちはシェル・ショック(戦争神経症)のトラウマを長い間、引きずることになった。
 一九一八年、オズワルド・シュペングラーの『西洋の没落』が出版された。
「文明の真の姿は、それぞれの国の文化的特質を意味する『血』によって決定される。アングロ・アメリカン政治の勝利によって、文明の自然の生命力は、マシーンによって置き換えられた」
「カネによって、民主主義はそれ自体の破壊者となった」
 この本を読んで、自分こそがこの「血」によ・・・