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連載

西風 421

関西の中高年を魅了する考古学

2016年6月号

 かつて都があった関西では考古学関連のニュースが多い。五月十二日、奈良県と京都市の発掘現場で同時に「歴史的な新発見があった」と発表された。
 奈良県は橿原市の瀬田遺跡で「後の前方後円墳のルーツではないかとみられる円形の墓が見つかった」と奈良文化財研究所が発表した。今回見つかった円形墓の一部に四角い突出部があったとみられ、これが前方後円墳に発展していったのではないかというのだ。円の周囲は幅約六メートルの溝が掘られ、突出部は墓への通路となる「陸橋」だったとみられる。有名な鍵穴型前方後円墳の形状の意味は考古学の大きな謎の一つだ。
 一方、京都市では旧二条城(京都市上京区)で、織田信長と対立した足利義昭が防御のために造ったとみられる堀の跡が発見されたと民間研究機関の古代文化調査会(神戸市)が発表した。これは、戦国時代に日本を訪れたポルトガル人宣教師ルイス・フロイスがローマへ送った書簡の「防御のため城の周囲に新たな堀を造り」という記述とも一致する発見だ。
 小学生でも知る「前方後円墳」と、戦国ドラマには必ずと言っていいほど登場する足利義昭に関する発見ということもあり・・・