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連載

日本の科学アラカルト

初期プログラミング教育で 挽回できるか

2016年6月号

 今年四月、文部科学省が小学校でプログラミング教育の必修化を検討している旨の報道がなされた。技術の進化が飛躍的に進む中、コンピュータ制御の能力育成が重要だと判断したからだとかで、五月にもそのための有識者会議が開催された。プログラミングの新教科をつくるのではなく、理科や算数などの既存教科中にプログラミング教育を織り込む方針で、中学や高校でもその拡充を図るという。小中高でのプログラミング教育の必修化は、政府の産業競争力会議で示された新成長戦略中にも盛り込み済みだ。
 しかしこれは余りに遅いと言わざるをえない。一九八〇年代に初等中等教育期における数学や理科の論理思考力養成と直結したプログラミング教育に深く関わっていた研究者は、「虚しい」と漏らす。かつての日本の教育行政に携わった人間たちのビジョンの欠落が今日の事態を招いたからだ。
 認知心理学者ピアジェの教育理論をベースにし、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のシーモア・パパートやマーヴィン・ミンスキーらが開発したコンピュータ教育言語LOGOは、八〇年代に入り一気に世界中に広まった。当時の論理演算用言語PASCALと人・・・