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ブラジル「弾劾劇」闇の首謀者たち

石油利権狙う米国の「露骨な策謀」

2016年5月号

 リオデジャネイロ・オリンピック開催を八月に控えたブラジルが、ジルマ・ルセフ大統領の弾劾騒動と、麻薬カルテルと治安機関との抗争激化という、多重危機に大揺れだ。だが、一連の危機の背景には、ルラ前大統領から十三年続く左派政権を嫌うブラジルの旧支配層がいる。白人富裕層を中核とする旧支配層は、ブラジルの資源から締め出された米国系多国籍企業群の支援を受けて、ブラジルを再び親米の軌道に乗せようと権力闘争を仕掛けている。
人種間の憎悪を煽る「麻薬戦争」
 世界屈指の景観を誇るリオデジャネイロ。コパカバーナやイパネマの海岸、グアナバラ湾の群島は、息をのむ美しさだ。だが、それらを一望にする絶景ポイントは、最近まで観光客が立ち入ることのできなかった地区にある。海岸を眼下に望む「バビロニア・ファヴェーラ」は、リオにおよそ九百ある貧民街ファヴェーラの一つで、麻薬組織が牛耳っていた。
 それが、二〇〇七年にリオが五輪開催に名乗りを上げると事態は激変した。当時のルラ政権下で、屈強な警察官を集めた精鋭部隊「治安維持部隊(UPP)」が作られ、特定のファヴ・・・