三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

マレーシア「空前の金融犯罪」の裏側

政府ファンドを喰い物にした悪党たち

2016年5月号

 マレーシアの政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」をめぐる不正疑惑は、ナジブ首相一家を中核とした、世界最大の資金洗浄(マネー・ロンダリング)事件に発展する情勢だ。米投資銀行「ゴールドマン・サックス」からアラブ首長国連邦(UAE)の政府系投資会社、さらにタックスヘイブン(租税回避地)など、近年の金融スキャンダルのビッグネームが総出演する、華麗な金融犯罪捜査になるのは間違いない。
突如出現した謎の若手投資家
 昨年五月、美術界注目のオークションがニューヨークのクリスティーズで行われた。巨匠ピカソの連作「アルジェの女たち」の「バージョンO」が、史上最高の約一億七千九百万ドル(当時の為替レートで約二百十五億円)で落札された。買い手は公表されず、一時はカタール首長の一族などの名前が挙がったが、美術関係者の間では当初から、「彼に間違いない」とされるマレーシア人がいた。
 ジョー・タク・ロウ(劉特佐)。一九八一年生まれ、祖父メン・タクは中国広東省出身。六〇~七〇年代に鉱山事業と蒸留酒醸造で元手を作り、その後、・・・