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WORLD

勢いづいた 「習近平降ろし」

「パナマ文書」が煽る中国政争の行方

2016年5月号

 世界の要人による不正蓄財疑惑が暴き出された「パナマ文書」の流出劇で、その茫洋とした風貌とは裏腹に、いま最も怯えているのは十三億の民の頂点に君臨する習近平中国国家主席に違いない。中国共産党の政治局常務委員七人のうち、習近平ら三人の親族がタックスヘイブン(租税回避地)にある会社の株主に名を連ねていたことが白日の下にさらされたからだ。
 中国は厳しい言論統制で、この私利私欲にまみれた悪事を国内では秘している。だが、いつまでも封殺できるほど今回の衝撃は小さくない。いや、むしろ不満と不信のマグマは共産党独裁体制の奥の院でふつふつと煮えたぎり、いつ大爆発が起きても不思議ではない情勢だ。
 高く赤い壁に囲まれた北京の中南海の深奥部は、党中枢の基盤を崩落させかねない事態に直面している。習近平降ろしの鐘が鳴り響くその日へ、カウントダウンが始まった。
無傷の李克強が担がれる可能性
「捕風捉影だ」。世界を震撼させたパナマ文書をめぐり、中国外務省の洪磊副報道局長は四月五日の定例会見で、こう受け流した。「風や影など不確実なものを追うよう・・・