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経済

《経営者東京裁判》柳井 正 (ユニクロ会長兼社長)

「客離れ」急失速を招いた張本人

2016年5月号

一時は六万円を超えていた株価がわずか九カ月ほどの間に半値以下にまで暴落したとあっては、投資家からすればたまったものではなかろう。カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するアパレル国内最大手、ファーストリテイリング(FR)の株価低迷が止まらない。昨年七月三十日に上場来高値となる六万一千九百七十円を付けた後はじりじりと値を下げ、今八月期第1四半期(二〇一五年九~十一月、1Q)の減益決算が伝わった一月七日にはついに四万円割れ。通期業績見通しの大幅減額修正に踏み切った直後の四月九日には一日で三千八百八十円、約一三%も下落して一気に三万円の大台さえ割り込んだ。時価総額に直せばこの間、三・五兆円前後にものぼるカネが吹き飛んだことになる。
「主犯」は他でもない。柳井正―だ。この超ワンマン経営者が打ち出した価格戦略が消費者のユニクロ離れを招き、業績が悪化。ひいては株安へと連鎖した。
「品質を守るためには必要だ」。秋冬物商戦の本格化を前に柳井がこう宣言してユニクロの定番商品の約五%値上げを表明したのは一四年のことだった。アベノミクスで賃上げの動きが広がる一方、FRにとって逆風となる円安・・・