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社会・文化

気象庁が「殺した」 熊本被災者

「地震ムラ」デタラメ発表の罪再び

2016年5月号


 四月十四日夜、気象庁で会見した青木元・地震津波監視課長は疑う余地がないかのように語った。
「今後、震度六弱程度の余震が一週間は続くので警戒してほしい」
 この言葉が、続く十六日未明に発生したマグニチュード(M)七・三の地震による死者を生んだと言っていい、と西日本の大学の地震研究者は語る。
「すべての犠牲者ではないだろうが、最初の地震でダメージを負った自宅に残ったり、戻ろうという気にさせたのは気象庁の安易な発表のせいだ」
 二〇一一年の大震災で解体的出直しを迫られたはずのわが国の地震研究体制だが、体質は相変わらずである。それどころか「開き直り」ともとれる態度で組織防衛に走っており、状況はむしろ悪化しているとさえいえる。この体質が冒頭の発表を生み、多くの犠牲者が出たのだ。
地震ムラの新たなドンが放言
「十四日の地震は『前震』だった」
 十六日未明に発生した地震を受けて、気象庁はこう前言を翻した。熊本に応援取材に駆けつけた全国紙社会部記者が語る。
「十五日の夜に一部・・・