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社会・文化

防げるガンで死ぬ日本人

ワクチンで救える命を見殺しに

2016年5月号

三月三十日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンによる被害を訴えている女性たちが国と製薬会社を相手取り集団提訴することを表明した。子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンの接種は、二〇一三年六月に厚生労働省が接種勧奨の一時中止勧告をしたままだ。集団提訴の報に触れた都内がん専門医が語る。
「これで日本のがん対策はまた世界から遅れる」
 実は、HPVワクチンにより防げるのは子宮頸がんだけではない。他部位のがん発症を抑える効果が世界的に注目されているが、日本では一顧だにされていない。
男児へのワクチン接種の有効性
 世界の医学界が子宮頸がんの次に注目しているのは頭頸部がんだ。これは、口腔、咽頭、鼻腔、喉頭など各部位にできるがんの総称である。日本では年間一万五千人程度が罹患し、約七千四百人が亡くなっている。近年、患者数は増加傾向にあり人口十万人あたりの罹患数は、一九九〇年代の五・二から、二〇一〇年には一二・二に倍増しているのだ。
 有名人も多く罹患している。近年、記憶に新しいところでは落語家の立川談志、ロッ・・・