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経済

企業は「会社の哲学」を取り戻せ

村上 陽一郎 (科学史家)

2016年6月号

―三菱自動車や東芝といった、日本の製造業の名門企業に不祥事が相次いでいます。日本の科学技術に問題があるのでしょうか。

 村上 日本企業の終身雇用制が崩れ、どこの職場でも正規、非正規社員との混合部隊になった。また、競争至上主義、利益第一主義が経営者以下、会社全体に浸透している。合理化のために企業合併も増えて、会社の名前はどんどん長くなる。
 そういう環境の中で、「企業は社会的責任を果たし、社会に貢献する」という、創業時の気概や責任感が希薄になっているのではないか。
 ソニーの井深大さんやホンダの本田宗一郎さんたちが持っていた、創業の精神や、「会社の哲学」といったものが今の企業にどれくらい受け継がれているのか疑問だ。
 ―マニュアル無視といった、怠慢も目立ちます。日本人は基本的なことを守れなくなっているのですか?
 村上 マニュアルを最初に作った人たちは、自分たちの経験上「これは絶対に必要だ」と・・・