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欧州は「銀行総崩れ」の様相

ユーロ危機「再燃」でも打つ手なし

2016年4月号

 欧州経済にまたもや銀行危機の暗雲が垂れこめている。今回の震源地は、ユーロ圏第三の経済大国イタリアで、銀行の不良債権は貸出残高の五分の一近くまで増え、年初から銀行株が急落して、経営が急速に悪化している。マリオ・ドラギ総裁率いる欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策や、タイミングの悪い監督強化が、さらに事態の深刻化を招いている。国内の銀行が悲鳴を上げる中、イタリアのマッテオ・レンツィ政権は次第に、「反緊縮」に舵を切っているほか、ポルトガルでは公然たる反緊縮の左翼政権が誕生した。難民危機とテロでパンク状態の欧州連合(EU)は、濃くなる一方の新たなユーロ危機の影とも戦わなければならない。
イタリア銀行株の異様な安値
 イタリア・トスカーナ州の古都シエナは、ルネッサンスの時代絵巻から飛び出したような、美しい町並みを持つ。一時はフィレンツェのライバルとして栄えただけに、カンポ広場は当時の富を今に残すとともに、華麗なパリオ祭で世界中に知られる名所だ。
 広場から徒歩数分のサリンベーニ宮は、ゴシック様式のファサーデが見事な中世の宮殿で・・・