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経済

《クローズ・アップ》緊急登板する「ミスター不協和音」

長門正貢(日本郵政社長)

2016年4月号

 巨大戦艦の舵取りはどうなるのか―。昨年十一月に金融子会社と同時に株式上場を果たした日本郵政グループのトップに長門正貢氏が昇格した。西室泰三・前社長の体調不良を受けての緊急登板だ。長門氏は昨年五月、ゆうちょ銀行社長に就任し、日本郵政グループの取締役も兼任していた。
 一橋大学社会学部を卒業した長門氏は、日本興業銀行に入行。みずほ統合後は、みずほコーポレート銀行で米州地域統括担当の常務を務めた。〇六年に退任後、富士重工業に転出し、海外担当副社長まで務めている。一二年にはシティバンク銀行会長に就任し、相次ぐ不祥事で動揺する同社の内部統制体制の立て直しに功績をあげた。以上の経歴でもわかるように、国際派のやり手バンカーである。
 だがその一方、シティバンク銀行時代には同社社長など他の経営陣との間で激しい軋轢を生むなど、「ミスター不協和音」の異名を取る一面も持ち合わせている。ゆうちょ銀行社長就任後も、副社長、常務などとの関係は決して芳しいものではなく、「どちらかというと、孤立しがちだった」(関係者)という話が漏れ伝わってくる。中でも折り合いが悪かったとされるのが、ゴールドマン・・・