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インド経済は 「乱調」必至

中銀総裁「退任」のただならぬ余波

2016年7月号

 インド経済の顔だった億万長者が相次いで破産の危機に直面している。新興国バブルの崩壊で、これまでの拡張路線に急ブレーキがかかったためで、富豪たちは国外に逃亡したり、モディ政権に救済を求めたりして、生き残りを画策している。財閥と政府がけん引してきたインドの成長モデルは、大きな転換点を迎えた。
 それはボリウッド映画のような逃走劇であった。
 億万長者ビジェイ・マリヤ氏が女性一人と十一個の荷物とともに、デリー発ロンドン行きの「ジェット・エアウェイズ」便に乗り込んだのは今年三月二日。直前まで一時間、航空会社の手配でビジネス・ラウンジに潜んでいた。客たちは有名なビール王に気がつき、ひそひそと噂し合ったという。
 税関とパスポート検査は、あらかじめ決められていたかのように、無事に通過。出し抜かれたマスコミ各社は直後から、「マリヤ遁走を見逃した責任者を処罰せよ」と激しく訴えることになる。「責任者」の中にはナレンドラ・モディ首相も含まれる。
桁外れの借金を背負って転落
 六十歳のマリヤ氏は、インド国内の十七行に円換算・・・