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連載

西風  422

古都から吹く「民泊」への逆風

2016年7月号

 東京五輪に向け、ホテル不足解消策として期待される「民泊」。六月二十日に厚生労働省などが規制緩和策を決めた。これに警戒感を募らせているのが日本最大の観光都市、京都だ。
 京都市はこのほど民泊の違法行為や近隣トラブルを防ぐために、市民からの通報を受ける専用の窓口「民泊一一〇番」を開設した。お隣の大阪府では府や市が独自の条例を制定し、前のめりに取り組んでいる。宿泊施設不足が深刻なのは大阪も京都も変わらない。
 京都市はすでに昨年十一月、衛生、消防、観光などの担当職員で構成する「民泊対策プロジェクトチーム」を発足させ目を光らせてきた。今年五月には京都市内の民泊の運営形態の実態調査の結果を発表した。それによると民泊仲介サイトに登録された施設が市内に約二千七百件。そのうち旅館業法の許可を受けていると確認されたのはわずか七%にとどまり、残りは違法の疑いが強いという。
 利用者の多くは外国人とみられている。二〇一四年には前年比六二%増の百八十三万人の外国人が京都を訪れ増加傾向は続いている。昨年の京都市内主要ホテルの稼働率は八八・九%と、ほぼ満室状態であり、多くの外国人旅・・・