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連載

日本の科学アラカルト 71

ブレイクスルーが期待される 「永久磁石」研究

2016年7月号

 磁石と人類の歴史は古い。紀元前三千年ごろにはすでに鉄を引き寄せる不思議な天然石(磁鉄鉱)が発見されていたとみられている。古代ローマのマグネシア地方では磁鉄鉱がよくみつかり、この地名が「マグネット」の由来になったという説が有力だ。
 磁気を帯びる磁性体合金を使った人工の強い永久磁石を世界で初めて作ったのは日本人だ。本多光太郎氏が一九一七(大正六)年にKS鋼と呼ばれる合金を作った。この合金を使った磁石は、従来のものよりも三倍も磁力が強かったという。
 現時点で世界最強の永久磁石であるネオジム磁石の開発にも日本人が携わっている。米国ゼネラルモーターズなどと共同でこの磁石を開発したのは、住友特殊金属(現・日立金属)に勤務していた佐川眞人氏ら日本人エンジニアだった。
 今日、永久磁石は生活の周りに溢れている。各種モーターはもちろん、スピーカー、センサーなどに使われており、コイルを使った電磁石に置換できないものは多い。不可欠かつ重要性の衰えない永久磁石に関する研究に、現在でも日本人が日夜取り組んでいる。
 近年の永久磁石研究の大きなテーマのひとつは「いかに・・・