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イタリアは 「ユーロ離脱」の瀬戸際

銀行危機と10月「国民投票」の二重苦

2016年8月号

 英国の欧州連合(EU)脱退(BREXIT)を決めた国民投票後、イタリアが次の焦点になっている。銀行部門が多額の不良債権に苦しむ中、「単一通貨ユーロからの脱退」を求める「五つ星運動」の支持率が、レンツィ首相率いる民主党を抜いて、世論調査で首位に躍り出た。今秋にも別の国民投票が行われる予定で、「十月危機」の様相を強めている。
EUが作り出した銀行危機
「五つ星」の政治家たちの公約は見ているだけで面白い。六月の統一地方選で選ばれた新首長たちは特に傑作だ。
「ベジタリアン都市作り」を宣言したのは、工業都市トリノのキアラ・アッペンディーノ市長。三十二歳の彼女は、環境運動を経て五つ星に加わり、自身も過去二十年間、ベジタリアンを通しているという。トリノがあるピエモンテ州は肉料理と赤ワインが名物なだけに、新方針には抗議が殺到しているが、市長側は「まず小中学校に菜食教育の講座をつくる。健康と環境にいい」と動じていない。
 ローマのヴィルジニア・ラッジ市長は、「市民の声に耳を傾ける」ことを第一にあげた。この後は、「機能する信号機の・・・