三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

《土着権力の研究》長野県 信濃毎日新聞

世論を翻弄する「小坂家の王国」

2016年8月号

 全国にくまなくある地方紙はいずこも土着権力だ。長野県の信濃毎日新聞はその中でも「名門」として異彩を放つ。創業家は、日本政界随一の世襲議員を保守政党から輩出してきた小坂一族。その体制寄りの来歴とは対照的に、リベラルな主義主張を展開する新聞として知る人ぞ知る地方メディアの雄に今、「偽善」という名の大きな疑問符がついている。
「信毎の記者はずっと取材には来ていたのに、六月まで一切報道しなかった」。こう批判してやまないのは長野の名刹、善光寺の信徒。この人物が指摘しているのは、六月に報道された善光寺大勧進(天台宗)のトップ、小松玄澄貫主のセクハラ・差別問題だ。小松が複数の女性職員に性的な発言を浴びせたばかりか、不当な人事異動が横行している疑惑が発覚したのである。
 この情報は今年一月から長野市内で出回り、信毎の記者は春先にこの信徒を訪れて話を聞いた。帰り際に「どうせ紙面には出さないんだろう」と問いかけると、記者は苦笑いしてお茶を濁した。六月一日に被害女性側の団体が小松を呼んで長野市内のホテルで会合を開こうとしたが、小松は突如欠席する。この一件を「他紙が報じる」と焦った信毎は・・・