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政治

安倍が難渋する「生前退位」問題

「最優先課題」発生で遠のいた改憲

2016年8月号

 七月十三日午後六時五十五分。NHK総合テレビの画面に突然ニュース速報のスーパーが流れた。
「天皇陛下『生前退位』の意向示される。内外にお気持ち表明検討宮内庁関係者」
 この速報を受ける形で午後七時からの「ニュース7」で大々的に生前退位の特ダネニュースが報じられた。万事慎重な公共放送であるNHKが間違いの許されない天皇陛下に関するニュースをこうした形で伝えるには余程の確証があったに違いない。
 放送された七月十三日という日付も実に絶妙だった。参議院選挙が十日に終わり、翌十四日は東京都知事選挙の告示日。さらに首相安倍晋三もモンゴルのウランバートルで開催されるアジア欧州会合(ASEM)に出席するため十四日午前中に日本を出発しなければならなかった。政治日程に一瞬の空白が生まれた隙を突くようにビッグニュースが流れた。天皇陛下の生前退位のお気持ちを内外に伝えるにはこのタイミングしかなかったとも言える。
 宮内庁サイドの練りに練ったメディア戦略の存在を窺わせた。翌十四日の新聞各紙は揃って一面のトップ記事で「生前退位」を報じた。発表記事ではないこれだけのビッグ・・・