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経済

米GM「女性会長」の辣腕

脱「台数至上主義」でトヨタに逆襲

2016年8月号

 かつては世界一の自動車メーカーとして君臨した米ゼネラル・モーターズ(GM)。今やトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)の後塵を拝し、万年三位に甘んじている。二〇一五年にはインドネシアやロシアから生産撤退・縮小、一七年末には豪州工場も閉鎖する。好調な米国景気という「延命装置」でなんとか生き延びているイメージすらある。しかし、GMの改革は着実に進んでいる。一五年通期決算での純利益は過去最高の九十七億ドル(約一兆二百五十一億円)、前年の約三・五倍というV字回復になった。増益は実に四年ぶり。GM復活の原動力になったのはメアリー・バーラ会長兼最高経営責任者(CEO)だ。
「かつて彼女ほどGMを知り尽くしているトップはいなかった」と、大企業のトップマネジメントが専門の大学研究者は指摘する。欧米では仏ルノー・日産連合の総帥カルロス・ゴーンのようにキャリアアップで企業を転々とする渡り鳥経営者が少なくない。前任会長のセオドア・ソルソGM筆頭社外取締役もそうだった。が、バーラ会長は一九八五年にGMの職業学校「ゼネラル・モーターズ・インスティチュート」(現・ケタリング大学)を卒業して以来、勤・・・