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経済

《クローズ・アップ》君島達己(任天堂代表取締役社長)

「ポケモンGO」でも救えない窮状

2016年8月号

 彗星のように登場したゲームアプリ「ポケモンGO」の影響で株価が乱高下した任天堂。昨年七月の岩田聡前社長の死後、暗中模索を続けてきた同社にとってこのアプリの登場は数少ない「福音」(証券アナリスト)となった。
 昨年九月にトップに就任した君島達己は、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)出身者だ。君島は「次の社長が決まるまでのつなぎ」(任天堂関係者)とされていたが、今の任天堂に次期社長を担える適当な人材は見当たらない。「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」といった大ヒットゲームの生みの親として知られ、業界関係者が真っ先に名前を挙げる代表取締役(クリエイティブフェロー)の宮本茂は、「本人が責任を取りたがらないタイプ」(同)という。創業家の血を引き「中興の祖」として君臨した元社長、山内溥の息子が社内にいるが、「とても社長が務まる器ではない」(ゲーム業界関係者)との評価がもっぱら。君島のワンポイントリリーフは長引きそうな雲行きだ。
 社員を引っ張る人間が不在となり、現在の「指導体制は昨年七月以来の迷走を続けている」(経済誌記者)。これを端的に表すのが、新型ゲーム専用機「NX」の開・・・