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経済

首都圏「電気料金請求」が大混乱

東京電力が抱えた新たな難題

2016年8月号

 警告はあった。不安は募っていたが、しかし、それは年明けから鳴り物入りで始まった電力の全面自由化キャンペーンの“狂騒”に搔き消されたのだ。
「システム連携のバグ潰しもせず、ぶっつけ本番の稼働などあり得ない。不具合は必ず起こる!」
 首都圏の送配電会社、東京電力パワーグリッド(PG)のシステムトラブルに伴う電気料金の請求遅延問題―。大手新電力の幹部は四月一日の全面自由化の前から、東電PGへ懸念を伝えていた。しかし、事態が深刻化し、経済産業省から業務改善勧告を受けた東電PGが、ようやく対策をまとめたのは七月一日。この時点でなお二万一千件の需要家の電力使用量の通知が遅延し、うち五千二百件はデータが消失した可能性があるという。新電力各社は収まらない。
 消費者からは「こんなことなら東電に契約を戻す」、商業ビル・倉庫などの法人顧客からは「テナント・荷主から回収できない料金は補償しろ」と、まるで自分たちの過失のように責められるクレームの対応に追われているからだ。
 四月以降、首都圏には百社以上の新電力が参入し、約百三十五万世帯が受電契・・・