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連載

誤審のスポーツ史 20

ヘボ審判に泣かされる球児たち
中村計

2016年8月号

地元紙にさえ一行のスコアしか載らない小さなニュースだった。
〈新城東作手2-1安城学園〉
 この夏、全国高校野球選手権大会・愛知大会の二回戦の結果だ。
 ただ、愛知の高校野球関係者はこうしみじみと語る。
「みんなどこかであのときの試合を覚えていて、やっぱり……と思ったのではないでしょうか。品行方正であることを求められる高校野球の世界では、一度、ケチがつくと、どこかに『勝たせたくない』という空気が生まれる。アンガク(安城学園)は年々いいチームになってるんですけど、その割には、なかなか結果がともなっていない気がしますね」
「あのとき」とは二〇一〇年七月十一日の愛知大会一回戦、安城学園高校と新城東高校の一戦のことだ。新城東作手高校は新城東の分校だが、兄弟校に「敵討ち」をされた形となり、六年前の出来事を思い出さずにはいられなかったのだという。
 高校野球では、時に、信じがたいほどお粗末な判定が下されることがある。地方大会ともなれば、その頻度はさらに増す。アマチュア審判ゆえ致し方ないことであり、そのほとんどは・・・