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マレーシアの 危うい「イスラム傾倒」

「トルコ化」進めるナジブ政権の愚行

2016年9月号

 マレーシアの政府系投資銀行「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」を舞台にした汚職事件で、巨額の資金詐取を疑われるナジブ首相が、「イスラム化」推進で逃げ切ろうとしている。だが、かつては「イスラム穏健派」とされた同国にも、反政府運動や過激思想の芽が根付いているだけに、自己延命だけを狙ったイスラム教傾斜の試みは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の安定の要を揺るがす危険をはらんでいる。

「首相の犯罪」に国際的捜査

「これは」と言って、人差し指を立てた日本企業のマレーシア現地法人トップは、「有力経済人との会食でも、話題にできなくなったんですよ」と声を潜めた。
 数字の「1」を示すサインはもちろん、1MDBのことだ。
 1MDB疑惑の怪は本誌五月号で詳報した通りである。その後の各国当局の捜査で、ナジブ首相の詐取は、二十五億ドル(約二千五百億円)相当になるとの疑いがいよいよ濃厚になってきた。米欧での派手な不動産売買、映画製作への出費、高額絵画購入といった手法に加えて、登場人物がこぞって首相・・・