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中国「海上民兵」の研究

尖閣「大挙侵犯」習近平の真の狙い

2016年9月号

 沖縄県の尖閣諸島周辺海域に最大で約四百隻にも及ぶ中国の漁船が、海警局の公船を伴って八月初旬から大挙して押し寄せてきた問題は日本でも大きく報じられたが、その主役は公船でも漁船でもない。釣果を求める漁民を装いながら、偵察・実戦部隊の役割を担う海上民兵という名の準軍事組織こそ、巨大な船群を統率する中核だった。
 海上民兵は軍事訓練を積み重ねて、常に百人規模で漁船団に紛れ込んでいたとされるが、その実相は日本ではほとんど知られていない。いったい彼らはどこから、いかなる狙いで駆り出されているのだろうか。この内幕を追うと、軍改革を標榜する習近平国家主席と、これを牽制する面従腹背の軍部との暗闘も浮かび上がる。

「参演活動」という名の示威行為

 終戦記念日で日本が鎮魂の祈りに包まれていた八月十五日の昼下がり、中国東南部にある福建省泉州市の深滬漁港。ねっとりとした海風が肌にまとわりつく。およそ十日間の航行を終えて、ここに戻ってきたのは数隻の青いトロール漁船だ。その行った先は尖閣諸島の周辺海域で、八月五日から本格化した・・・