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政治

菅と二階の「冷たい同盟」

任期延長問題に潜む「安倍降ろし」の萌芽

2016年9月号

 台風七号が関東地方をかすめて北上した八月十七日、自民党の新しい幹事長に就任した二階俊博(七十七歳)は山梨県南アルプス市にある元自民党副総裁金丸信の墓前で頭を垂れた。一九八三年の衆議院選挙で初当選した二階が最初に仕えたのが、同じ旧田中派に属し自民党国会対策委員長だった金丸。
 以来、二階は折に触れて金丸の薫陶を受けてきた。二階自身も金丸の足跡を辿るように自民党の国対委員長を務め、金丸同様に総務会長から幹事長の座を射止めた。その就任の経緯も驚くほど酷似していた。金丸は前任者の田中六助の病気入院。二階も前幹事長谷垣禎一の予期せぬ自転車転倒事故による入院が、彼に政権与党の幹事長の座を与えた。
 金丸は茫洋とした風貌には似つかわしくない政治力を発揮する。首相中曽根康弘(当時)に対しても「行き過ぎれば刺し違える」と凄みを利かせた。最大派閥の「数の力」と独特の人心収攬術が金丸を「政界のドン」に押し上げた。二階が幹事長に就任して約一カ月。二階にも金丸を彷彿とさせる片鱗が見え始めている。金丸の墓参りも単なる就任報告ではない。二階の傍らには無所属で衆議院山梨二区で当選を重ねる長崎幸太・・・