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政治

安倍「対中外交」に異変あり

外務省エース「台湾赴任」の深謀

2016年9月号

 今年夏、外務省で日本の外交に影響する人事が密やかに決まった。アジア大洋州局兼南部アジア部審議官を経て大臣官房付だった垂秀夫氏が休職扱いとなり、日本の対台湾窓口機関「交流協会」に出向―。この名前にピンとくる人は少なくないだろう。二〇一三年十一月十八日付で、在中国日本大使館の政務公使だった垂氏は、中国共産党に不都合な情報を収集していたとして日本への帰国を余儀なくされた。その外交官がなぜ……。日本政府関係者は「台湾で中国の情報収集の先兵役を担う」と明かした。「親日反中」のDNAを継ぐ台湾・民進党が政権を奪還して間もないこの時期に、現地に根を下ろして日台間の情報ネットワークを磨き上げ、中国の対台湾インテリジェンス工作への防波堤を築く―。異例とも言える今回の人事からは、日中国交正常化に伴い断交した台湾との強固な「二国間関係」構築を狙う安倍官邸の意向が透ける。今回の人事は、台湾を舞台に日中スパイ合戦の序章となるのだろうか。

「中国にはゆゆしき男」

「垂さん、台湾でのご活躍を期待しています」。・・・