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経済

血税の焼却炉「産業革新機構」

二兆円が泡と消える「無能国営ファンド」

2016年9月号

 経済産業省が生み出した官製ファンド「産業革新機構(INCJ)」が日本の企業再編を歪めている。国の信用をバックに約二兆円の投資枠を持つINCJは、再生の見込みが薄い半導体や液晶パネル産業の再生に三千億円を超える血税を投じたが、回収どころか投資した企業の存続すら危ぶまれている。
 電機業界で現在注目を集めるディールがある。自動車向けマイコンを得意とする日本最大の半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスの争奪戦だ。日本電産、独半導体大手のインフィニオン・テクノロジーズ、中国の紫光集団など、名乗りを上げる買い手は数多あるが、それを阻止しているのがルネサスの筆頭株主であるINCJだ。
 四年前に一千三百八十三億円を出資してルネサス筆頭株主になったINCJは、本来はイグジットのタイミングを計っているはずだ。複数の企業が「買いたい」と言っているのだから、うまく競わせて売り値をつり上げればいい。儲けた金は国庫に入るのだから、それが国のためである。
 だがINCJは日本電産やインフィニオンにルネサス株を売る気配はない。またしても自動車業界が横槍を入れているからだ。
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