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連載

Book Reviewing Globe 390

破裂が近い中国の「債務爆弾」

2016年11月号

 二〇一〇年代、世界貿易は一九八〇年代以降で初めて世界のGDPの伸びを下回った。リーマンショック後の米国発の景気停滞は長く、また深く世界経済を萎縮させた。世界で起こっているのは、製造業の衰退であり、世界貿易の減退であり、銀行の海外貸出と国境をまたぐ資本フローの縮小であり、長期にわたる景気停滞である。そして、その背景にある世界規模の生産年齢人口の減少である。
 おそらく次の世界リセッションは中国発となるだろう。その引き金は、中国の「債務爆弾」の破裂である。
 リーマンショック後数年間、中国は世界の経済成長のほぼ三分の一を牽引したが、過剰なインフラ投資や住宅投資が裏目に出て、中国の債務の増加分は世界の債務のそれの三分の一となった。中国の債務はいまなおGDPの二倍のスピードで膨れあがっている。
 著者は、歴史上三十の金融危機を調査した結果、「民間部門の債務の伸びが五年連続で経済成長の伸びを上回り、民間部門の債務のGDP比が四〇%を超えると金融危機の赤信号」と分析している。
 中国の場合、二〇一三年にその比率が八〇%に上昇した。それまでの最高水準はタイが・・・