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経済

《企業研究》 小野薬品工業

新薬バブル「暗転」で社業傾く三重苦

2016年11月号

「まさにトリレンマ」。小野薬品工業幹部の一人がこう呻く。
 副作用や競合品の登場に超高額薬剤費批判―。同社が社運を賭ける形で展開するがん免疫治療薬「オプジーボ」にいま三重苦が襲いかかっている。
 なかでも「深刻」(事情通)とされているのが副作用問題だ。オプジーボの投与が影響した可能性のある重篤な症例がここにきて相次いで発生しているためだ。
 十月十八日には、厚生労働省がこれまでに投与された患者のうち六人が心筋炎を発症し、そのなかでオプジーボとの因果関係を否定できない三人のうち一人が死亡したと公表した。さらに、同省は死亡例はないものの、血小板が減少して内出血を起こす「免疫性血小板減少性紫斑病」を発症した患者三人、筋肉細胞が壊れる「横紋筋融解症」を引き起こした患者四人が、新たに報告されたことも明らかにした。
 医療現場からは「現時点ではまだ認識できていない副作用が今後も様々な形で発生してくる危険性を捨て切れない。怖くて手が出せない」(都内の病院関係者)との声も上がる。

致死的な副作用を見逃す形に・・・