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社会・文化

戦没者「遺骨収集」事業

目に余る厚労省の「手抜きとデタラメ」

2016年11月号

 日本は今、二〇二〇年の東京オリンピックを見据え、百家争鳴の様相だ。だが戦後七十一年を経てもなお、忘却の彼方に置き去りにされた人々が酷寒のシベリアや酷暑の南洋に時計の針を止めたまま眠っていることに思いをはせる日本人は多くない。海外の戦地での戦没者は約二百四十万人。軍人や家族による持ち帰りや国の事業で百二十七万柱ほどが日本へ戻ったものの、いまだに約百十三万柱が帰還していない。安倍政権は二〇一六年度から二四年度までを遺骨収集の「集中実施期間」と位置づけ、本格的な遺骨収集に乗り出す構えだが、その態勢はお寒い限り。そもそも、従来のずさんな遺骨収集の実態すら、政府でまともに検証されていないのだ。このままでは安倍晋三首相の強い意気込みも空振りに終わりかねない。
 遺骨収集事業は旧日本軍人や軍属、民間人を対象として一九五二年に南太平洋の国々や東南アジア諸国で始まり、九一年からはシベリア抑留者の遺骨収集にも着手した。事業は、厚生労働省が日本遺族会や戦友会などに補助金を支給し、政府の遺骨収集団に参加してもらう方式が主流だ。
 二〇一〇年にはNHKの報道で、フィリピンで遺骨収集していた・・・