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WORLD

プーチンが進める 東欧諸国「奪還」

相次ぐ親ロシア政権誕生の内幕

2016年12月号

 ロシアのプーチン大統領が仕掛ける欧州戦略が、着々と成果を積み重ねている。十一月中旬には、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟するブルガリアと、旧ソ連で西側志向の強いモルドバで、「親ロシア」の大統領が誕生した。トランプ米次期大統領の登場とあいまって、クレムリンは欧州の勢力地図を塗り替える好機ととらえている。
 ブルガリア、モルドバの衝撃的選挙結果が伝わると、西欧各国の安保・外交関係者は複雑な反応を見せた。在欧のある外交筋が、「EUにとって好ましいわけがない」と率直に困惑を示す一方、各国はおおむね「ブルガリアがEUやNATOを離脱するわけがない」と平静を装った。英「フィナンシャル・タイムズ」紙の外交記者トニー・バーバー氏は、「選挙結果をどう読むか」のコラムで、「両国の置かれた立場は複雑で、両国がこれでロシアの影響圏に入るとの見方は皮相かつ単純すぎる」と、過剰反応を戒めた。
 だが、ロシアのプーチン政権が過去数年間にわたって、周辺国(特に旧共産圏の中・東欧)で仕掛けている、「隠密戦争」を考慮すると、それほど安閑としてもいられない。ロシアは天然資源、文化活・・・