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WORLD

中国の桁違いな「認知症問題」

世界最多「患者爆増」に歪む大国

2016年12月号

「走る殺人鬼」と化した高齢者の暴走運転、国家の赤字を膨らませる社会保障費……。日本では少子高齢化に伴うニュースが日々報じられているが、この難題が日本より深刻に襲いかかっている国がある。それは十三億七千万人超の人口を抱える隣国、中国—。認知症患者の爆発的な増加に打つ手なしの状況だ。「家族で何とかせよ」とむちゃな法改正に踏み切ったものの、それが親子や兄弟の関係を切り裂く引き金にもなっている。昨年まで続いた「一人っ子政策」の重大な副作用が、歪んだ人口構成を招いた元凶だ。
 国際社会で存在感を誇示する中国は、自らまいたその種で社会の内側から揺らぎを見せ始めた。中国の富裕層の中には日本の介護保険の盲点を突いて、来日して余生を過ごそうと目論む者も現れ、中国の高齢化の累が及びかねない状況にある。
 国連の世界人口推計などによれば、中国で六十五歳以上の人口が占める割合(高齢化率)は、二〇一四年末の時点で一〇・一%。五〇年以降、三〇%代前半で横ばいとなるまで右肩上がりで進む。介護制度が整っていない中国は、とても急速な高齢化に追いつく政策など遂行・・・