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政治

《罪深きはこの官僚》山越敬一 (厚生労働省労働基準局長)

電通「見せしめ捜査」で 省益拡大

2016年12月号

「『長時間労働削減推進本部』による、省を挙げた取組を引き続き進めてまいります」
 今年一月、労働行政専門誌にこう年頭所感を寄せたのは、厚生労働省労働基準局長の山越敬一。電通社員の過労死認定を受けた立ち入り調査の責任者だ。東京・汐留の電通本社を所管しているのは東京労働局や三田労働基準監督署だが、このケースは当初から「本省マターで、『国策捜査』が行われている」(厚労省担当記者)。
 新入社員を過重労働で死に追い込んだ電通について擁護できる点は一片もない。しかし、山越の指示で実施されている同社への一連の調査には疑問符がつく。恣意的な運用だけが問題なのではなく、通常の労働行政の怠慢を覆い隠し、労働基準法改正という厚労省の悲願達成に向けたアリバイ作りのために行われているのだ。
 十一月七日、異例の八十八人という陣容で電通本社と三つの支社への強制捜査に入った。実はこの捜査は「本来十月下旬に行われる予定だった」(同前)。一週間以上ずれ込んだのは、「確実に大量の違反をみつけるように山越からの指示があったため」(全国紙社会部記者)だという。厚労大臣の塩崎恭久から発破をかけら・・・